お約束の「サスペンションとは!」ですが、まずは初級編からスタートしてみたいと思います。
まえがき
初級編という事で、ざっくりとした概要を書いてみたいと思います。
前の記事でもお伝えしましたが、ここで言うサスペンションとは車体に結合されたアーム類やサスペンション形式ではなく、一般的に多く用いられているストラット本体に代表されるクッションユニットを指しています。
ストラット本体はこんな感じのものです。
細かい内部機構とかは、中級・上級編で改めて説明としますので、初級編ではざっくりと簡単に進めさせて頂きます。
「サスペンションとは!」初級編スタートです。
「サスペンションとは!」初級編
サスペンションとは、一般的に反力として作用するバネ(スプリング)と減衰力発生装置であるダンパーの組合せで構成されています。
最初に、この反力とダンパーの構造・機能を理解する事が重要です。
1.反力の役割
反力は車体などのバネ上重量の荷重を支える役割と、凹凸などのバネ下からの衝撃を荷重として受け止める役割を持っています。
反力には、大きく分けてコイルスプリングなどをつかったバネ反力とエアー(ガス)反力があり、各々以下の特徴を持っています。
スプリングは圧縮する程、反発力が強くなります。これをバネ反力と言います。
このコイルスプリングを使ったバネ反力ですが、反力特性は比例特性になります。
次にエアー(ガス)反力ですが、これは空気などの気体を圧縮した時に得られる反力です。
コイルスプリングによるバネ反力が比例特性であるのに対して、エアー(ガス)反力は二乗特性になります。
スプリングに於けるイニシャルの設定について
プリロード又はプリセットと呼ぶ場合もあるが、何れも予めスプリングを縮めて伸び切り時(セット長)でも反力が出る状態を指します。
どれも同じ意味ですが、ここではイニシャルという表現で統一します。
Fig.1
A=スプリングのフリー時の長さ(フリー長)
B=スプリングのセット時の長さ(セット長)
イニシャル量=A-B
イニシャル量とスプリングレート変更について
反力に於けるイニシャル量を変更した場合とスプリングレートを変更した場合の特性変化についてですが、下記Fig.2の様になります。
Fig.2
Fig.2の左図がイニシャル量を増減した場合の荷重特性変化となります。
縦軸の横軸との交点はストロークしていない”ゼロ”の状態ですが、更に左側の荷重が”ゼロ”になるマイナスストローク量が所謂イニシャル量となります。
黒を基準に赤はイニシャル量を上げた状態で、青はイニシャル量を下げた状態の荷重特性となります。
スプリングレート自体は変わりませんので特性は平行移動となりますね。
当然ですがイニシャル量を変化させた分だけ荷重が増減されるので、1G(※1)荷重も変化し、1G位置(車高)も変わります。
※1 1Gとは地球上で重力を受けた状態。タイヤが接地した状態で重力とつり合った荷重(位置)を指す。
Fig.2の右図がスプリングレートを変更した場合の荷重特性変化となります。
黒を基準にイニシャル量は同じでレートだけ上げた場合は水色となります。
対して、青は1G位置を合わせてレートを上げた場合の特性です。
1G位置の荷重を合せるのでイニシャル量は減らす事になりますね。
逆に赤はレートを下げた場合となります。
スプリングレートを変えるという事は、即ち特性上の傾きが変わる事になります。
言い換えるとこの傾きがスプリングレートという事になります。
この辺りの増減させるべきイニシャル量は簡単な計算で直ぐに出す事が可能です。
この計算方法や考え方は中級編で改めてお話したいと思います。
2.ダンパーの役割
いよいよここでは減衰力発生装置であるダンパー(ショックアブソーバーとも言う)を学んでゆきたいと思います。
1).振動抑制及びショック吸収機能
前述の反力機能だけでは一度ストロークするとスプリング本体の反発力でクッションがいつまでも動き続け、収束しないのでサスペンションとして機能しません。
そのためダンパーがスプリングとセットになり、ショック吸収機能を発揮する構造になっています。ダンパーは外部より入ってくる力を、オイルが小さな穴を通ること(抵抗)により振動を抑えます。
ダンバーの振動抑制はこんなイメージですね。
ダンパーを動かそうという力に対して発生する抵抗力を減衰力といい、エネルギーを熱に変えて発散しています。
2).車体の動的姿勢の制御機能
ダンパーは、前述の振動抑制及びショック吸収による乗り心地性能だけでなく、車体の姿勢や操縦安定性(操安性能)をコントロールする役割もあり、完成車の性格を決める重要な部品です。
スプリングとダンパーの根本的違い
サスペンションを構成しているスプリングは、停止している時でも荷重を支えているのに対し、ダンパーは動き出して始めて機能を発揮します。
この様にスプリングの働きはストロークの位置に依存するのに対し、ダンパーの働きはストローク時の速度により機能する速度依存型と言えます。
ショックアブソーバーとしての考え方
意外と認識していないと思いますが、車体とタイヤの間にあり、衝撃緩衝と言う機能も果たしています。
またタイヤに掛かる急激な荷重変化を緩和させてグリップを安定させると言う意味では、必要不可欠な機能です。
さて、今回は初回編として反力系とダンパーの役割をお伝えしましたが、如何だったでしょうか?
次回は引き続き初回編として、いよいよダンパーの内部構造に迫ってみたいと思いますのでお楽しみに!
kazySUS