前回に引き続き、中級編をお送りします。
「サスペンションとは!」中級編-Part4
前回、反力の計算方法と考え方ついて書きましたので、今回は減衰力の測定方法について書いて見たいと思います。
7.減衰力の測定方法
減衰力の測定方法としては大きく分けて2つあります。
一つ目は一般的なクランク式による測定で、二つ目は油圧加振機による測定です。
この二つの測定方法について観てみましょう。
1).クランク式による測定
Fig.9 クランク式概略図及び計測データー
こちらがクランク式の簡易図となります。
上側にロードセル(荷重センサー)を付けて下側のクランクをモーターで回す事により、ロードセルに発生する荷重を測定します。
合せてストロークセンサーにより、変位と速度も同時測定します。
これにより荷重、変位、速度の3つのデーターが計測出来ます。
上記Fig.9右側の計測データーは下死点(BDC)から2回転分を取り出したものです。
測定するストロークはクッション自体のストロークにより左右されますが、一般量産車では±20mm一定として測定します。測定ストロークを変える場合はクランクピン位置を変更する事で対応します。
測定は下記ピストンスピードになる様に回転数を制御し、各々のピストンスピードで測定を繰り返します。
測定ピストンスピード
一般的には、0.05m/s、0.1m/s、0.2m/s、0.3m/s、0.5m/s、0.7m/s、1.0m/s辺りまでを測定します。
クランク式のメリット・デメリット
・測定ストロークがクランクピン位置によって固定出来るため、モーター回転数の制御さえ出来れば比較的簡易に測定が可能。
・測定機器としては比較的安価に出来、セッティング違い等の単体比較としては必要にして充分。
・サイン波のみしか測定出来ない。
2).油圧加振機による測定
より実車に近い入力波形による測定が可能で一般的にはシミュレーターなどの解析に使われますが、減衰力測定も可能です。ただ正確なサイン波の測定がちょっと苦手。
油圧加振機自体でストロークとピストンスピードの両方を制御しなければならないため、同一クッションでのセッティング違い等の減衰力特性比較としては向いていない。
油圧加振機のメリット・デメリット
・入力波形がサイン波だけでなく、矩形波含めてプログラムで自由に選択可能。
・実車計測などで得られた波形での比較及び検証が得意。
・ストロークとピストンスピードの両方を正確に制御するのが難しく、減衰力特性としての比較には不向き。
・測定装置自体としての設置場所が限られ、かつ高価である。
8.測定された減衰力と減衰力特性の考え方など
測定されたデーターはサインカーブの連続データーとなります。
データー化の流れとしては前述Fig.9で紹介した右側3つの計測データーを使います。
最初に荷重と変位データーからLoop特性図にしてその後に減衰力特性図にします。
Fig.10 Loop特性及び減衰力特性
Loop特性とは縦軸に荷重、横軸に変位を取り、下死点スタートのクランク1回転分を下死点で合わせたものです。
上側が伸び側行程で下側が圧側行程の時計回りのデーターとなります。
通常皆さんが観ている右の減衰力特性はLoop特性のピーク値を各VP(ピストンスピード)毎にプロットしたものになります。
少々乱暴な言い方で表現すると、減衰力特性がエンジンの全開時出力特性となり、Loop特性はエンジン出力の過渡特性を表わしていると理解して頂ければよいでしょう。
これ以外に縦軸に荷重、横軸に速度を取ったFV特性という見方もあります。
このLoop特性とFV特性でクッション基本仕様の狙いと不具合等が観れますが、そちらは上級編で改めてご紹介したいと思います。
基本仕様がほぼ決まってセッティング段階では減衰力特性だけで充分です。
尚、一般的な減衰力試験機計では減衰力特性まで自動で出力されますので、ここで書いた様な作業は不要です。
こんな風な流れで減衰力試験機から減衰力特性が出力されていると理解して頂ければ良いと思います。
最後に実際に計測したLoop特性をご紹介して置きます。
Fig.11 リヤクッションLoop特性
こちらは検証として測定VP域を細かくして計測したものです。
あまり詳しくは書けませんが、通常より相当細かくして計測したと理解下さい。
でもって、Loop特性には色んな波形があります。
こちらはほぼ綺麗な台形ですが、たまご型やおにぎり型もあります。
吸収エネルギーは減衰力の絶対値もあるけど、このLoop波形の面積も影響していると考えられます。
そんな事を最後にお伝えしながら、今回で中級編は一先ず終了とさせて頂きます。
上級編は、もう少し気楽にしながら更にマニアックになるかも…。
kazySUS