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80年代モトクロス特集『RACERS Vol.59もう一つのNR』買いました!

今回のRACERSはモトクロスという競技が一番輝いていた管理人も大好きな80年代モトクロス特集です。

特に今回は、あのNR500でお馴染みのHonda NRブロックにあった「もうひとつのNR」即ち、Hondaのワークスモトクロスチームのお話みたいなので、書店で見かけて思わず買っちゃいました。

この時代の何が凄いって、技術者の創意工夫による技術革新に他ならないでしょう!

そんな訳で今回はRACERS Vol.59から一部引用しながら、当時の技術革新に迫って行きたいと思います。

80年代モトクロスの技術革新とは!

この80年から84年に掛けての5年間は伝説ともいえる技術革新の開発の場でもあったんだと思われます。当時を経験された方々が羨ましいですね。

今や、どの二輪メーカーのどのカテゴリーでもリヤサスペンションに採用するリンク形式はほぼプロリンクですが、このプロリンクの始まりはこの80年モトクロスです。

それにフロントサスペンションとして開発された通称カマキリとも呼ばれるダブルプロリンクもこの時代です。

残念ならが、レースには数戦しか出場していないですが、管理人などは当時のメンバーの方に是非ともこの辺りのお話を伺いたいくらい羨ましい開発環境です。

それと、2サイクルエンジン開発ですかね。

モトクロスの世界で125、250クラス共に2気筒があったなんてHondaだけでしょう!

そして今までほとんど知られていなかった250のタンデムツインなど今回のRACERSは見どころ満載です。

結果的にはこの2気筒シリーズの知見が、後のNS500の3気筒の開発に繋がっていくのでしょうから、Hondaの2ストロークロードレース開発にも多大な貢献をしていたんでしょうね。

1.サスペンションの技術革新とは!

まずは管理人が一番気になるサスペンションの技術革新についてです。

リヤサスペンションの技術革新とは!

この頃のサスペンション形式を観ると、Yamahaはモノクロス、Suzukiはフルフローター、Kawasakiはユニトラックと各社様々な形式に取り組んでいたようです。

遅れていたHondaはプログレシップ特性を活かしたプロリンクを投入し、成果を上げます。

ただ当時、リヤブレーキはフローティングマウントとの考えが全盛時代であり、合わせてアンチリフトによるスコート力とのバランスを探っている最中でもあり、リンクレシオも色々トライされたみたいです。

株式会社三栄 RACERS Vol.59 P75より引用

80年代中盤辺りにリヤディスクブレーキが投入され、リジットマウントになって以降はプロリンクのクッションアームもブーメランからデルタに変わりつつ、リンクレシオの考え方もほぼ収束して現在に至るようです。

フロントサスペンションの技術革新とは!

現在もフロントサスペンションについては、テレスコピックが主流ではありますが、Hondaはこの頃にフロントサスペンションにもプログレシップ特性を活かしたダブルプロリンクなるサスペンションを登場させています。

株式会社三栄 RACERS Vol.59 P84より引用

元々はバレンチーノ・リビという方が考案された「リビ・クアドリラテラリ・フォーク」が原型のようですが、全くの別物ですね。

このダブルプロリンクのメリットは記事にもあるようにプログレシップ特性による吸収性の良さでしょう。

ただ半面、剛性と重量のバランスとコスト増がネガとなったと思われます。

テレスコピックはご存じの通り、スライドパイプによる摺動構造なので、全伸びが一番剛性が低く、ストロークするに従い、剛性が高くなります。

これに対してダブルプロリンクは、ロアフォークとミドルリンクの屈曲が少ない全伸び近辺で剛性が高く、屈曲が大きくなる全屈付近では剛性が低くなると思われます。

これは構造上、ストロークするに従い、仮想ストローク軸に対してリンク結合部が離れることに起因していると考えられます。

リンクの剛性を上げれば、各部の形状が大きくなることで重量が重くなるだろうし、テレスコピックと逆になる剛性特性までは変えられないので、そこがデメリットとして残る可能性はありますね。

ただモトクロスの場合はフロントアクスルストロークが300mm以上と多くならざるを得ないのでネガも出やすいですが、ロード系の120mm辺りのストロークで、かつ今の技術を持ってすれば、性能もよく操安上のメリットも出せるものが出来る気がします。

是非とも今の技術で再トライして頂きたいと考えますが、如何でしょうかね。

その他の車体系技術とは!

簡単に紹介だけさせて頂きますが、低重心を狙ったセンタードフューエルタンク。

勿論、当時はキャブレター仕様なので、燃料は自然落下式です。

従って、下側のタンクからクランクケースの脈動を利用したポンプで上側タンクに汲み上げる仕様になってますが、この辺りのアイデアはさすがだと思います。

それからアルミモノコックタイプのサブフレームですが、これはクリーナーボックスのクリーンサイドの容量増加と整備性向上が狙いだったんだろうけど、相当お高いサブフレームだったと思いますね。

あとは、先にご紹介したリヤブレーキ反力を利用したスコートリンクでしょう。

この辺りは当時の姿勢制御機構として有効だったんだと思われます。

RACERS Vol.59記事でのよもやま話

ちょっと今回のRECERS Vol.59に掲載された写真を観て管理人が気づいた事があります。

懐かしい写真であることには変わりがないんですが、正立フロントフォークについてです。

今は倒立フロントフォークが全盛なので、アクスル下に余分なものは付かないんですけど、正立はストロークを稼ぐ為にボトムケースがアクスルの下側にも延びてますね。

これって、轍を走破する上では邪魔になりますよね。

なので、特に轍の出来やすいマッドレースでは、昔と今では轍の深さとか幅も違うんじゃないかと思った訳です。

少なくとも正立フロントフォークの時代はアクスル下側部分が泥でつっかえると前に進めなくなる筈なので、轍の出来かたも今とは違うんだと想像します。

それと、賢明な読者の方なら直ぐに分かると思いますが、ボトムケースの色が写真により違いますね。

アルミの鋳造品らしきものもあれば、切削品らしきものもあります。

結論から言うと、アルミ地肌の切削ボトムケースがKYB製のワークス専用フロントフォークだと思われます。

ちょっとネズミ色っぽいボトムケースが、SHOWA製ワークス専用フロントフォークですね。

何が違うのかはこちらの過去記事のよもやま話をご覧下さい。

と書きつつ、気づいたら車体編だけで終わりそうなでエンジン編は次回にさせて頂きます。

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