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サスペンションの慣らしとメンテナンスについて(追記あり)

忙しさに感けてすっかり更新をサボっていた管理人です。

ただ毎日少なからずアクセスがあり、記事を読んで頂けているのは嬉しい限りです。

でもって、サスペンションの慣らしとメンテナンスであるオーバーホールについて書いてほしいと要望がありましたので、今回はそんな視点で書いてみたいと思います。

サスペンションの慣らしについて

サスペンションに慣らしは必要なのかについてですが、慣らしは必要だと考えます。

エンジンほどではないですが、サスペンションも油圧機器の集合体であり、慣らし効果は少なからずあります。

一般的に乗り始めはちょっと口元の動きが硬めでゴツゴツしていたのが、暫く走り込んでくると動きがスムーズになるのが分かると思います。

これが所謂、慣らし効果となります。

何が影響しているかと言うとブッシュとアウターとの摺動フリクションであったり、オイルシールリップ部のエッジによる初期フリクションとかになりますね。

後述しますが、レース用サスペンションで、かつオフ系では慣らしは意外と重要です。

街乗りの量産車の場合は、特に意識しなくてもエンジンの慣らしも兼ねて通常通りに走っていれば大丈夫です。

レース用サスペンションでの慣らしとは!

ここでは主にレースを前提としての慣らし方法を解説をしてみたいと思います。

最初にオフ系のレース専用車であるトライアルを例にして書いてみましょう。

トライアルの慣らし方法とは!

トライアル車で車体を含めたサスペンションの慣らしをする場合ですが、前後共にイニシャルアジャスターと減衰力アジャスターをミニマムに設定します。

勿論ですが、元の位置はマニュアルを参考にしっかりメモして置く事。

フロントフォークは六角レンチやマイナスドライバー等でミニマムにすることは可能だと思いますが、リヤクッションのイニシャル調整は専用工具が必要な場合があります。

無理やりドライバーとハンマーなどで緩めることも出来ますが、傷つけるのが嫌ならイニシャルアジャスターはそのままでも大丈夫です。

こうやって前後のサスを動き易くした状態で出来るだけサスを動かします。

飛び降りたり、リフトアップして岩に前後のタイヤをぶつけるとかでサスストロークをフルに使う動作を繰り返します。

過去に管理人が立ち会った世界選手権や国内スーパーA級クラスの方々だとシェークダウンで半日~一日ほど慣らしに時間を掛けます。

この慣らしを行った後に前後共にオーバーホールを実施すると見違えるほど作動性が良くなります。

この時のオーバーホールではブッシュ交換のみでオイルシール等はそのままグリスアップだけにして各部のアジャスターを標準時の設定として組み上げます。

上記慣らし及びオーバーホールを行うことで、ボトムケースとカートリッジの内面の慣らしと各部ブッシュに付着した金属粉が取り除かれ、かつオイルシールとインナーチューブの馴染みも良くなり、トライアルに求められるスムーズな作動性になります。

これはかなり極端な例ですが、トライアルのプロライダーはこんな感じの慣らしを行ってました。

因みにRTL260Rでは慣らし後、スタンディング乗車状態でFR40mm前後、RR70mm前後の1G沈み込み量に合わせると、一番マシンとしてバランスよく性能が発揮出来ると思います。

一般のトライアル車では慣らし後のオーバーホールまで出来ないでしょうけど、出来るだけストローク量を多く使った慣らしをすることで早期に作動性を向上させる事が出来ます。

因みにトライアル車のフロントフォークはマニュアルに基づいて分解する事は可能だと思いますので一般ユーザーでもオーバーホールは出来ると思います。

リヤクッションについては、ほとんどが窒素ガス封入タイプ分離加圧であるため一般ユーザーの分解は不可であり、サスペンション専門のショップでの作業となります。

因みにサスペンションメンテナンス&チューニング専門のショップはこちら

www.scuderia-okumura.com

モトクロスでの慣らし方法とは!

こちらはトライアルと違ってコースを走行することで慣らしを行います。

従って、前後のイニシャルと各アジャスターは標準位置のままで走行すると良いでしょう。

出来れば、故意に高めにジャンプしたり、バンクを利用して旋回するなどして、サスストローク量を多く使う様にすると効率よくストローク奥まで慣らしが出来ます。

こちらも半日から一日位で慣らしは完了出来ると思います。

因みにこちらもトップライダーでは、慣らし後に前後共にオーバーホールを行っていると思います。

管理人も知らなかったのですが、今では市販モトクロッサーでもフロントフォークは内部構造倒立分離加圧なんですね。

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©Honda Motor Co., Ltd. 2020 HONDA CRF450R/RX OWNER’S/SERVICE MANUAL P17-18より引用

こちらがその内部構造倒立分離加圧です。

内部構造倒立分離加圧とは倒立フロントフォークに分離加圧リヤクッションのサブタンクを上部に置いた構造をそのまま入れてあると思って頂ければいいです。

通常は倒立フロントフォークであっても、カートリッジは下側になっていますが、それを上下逆にして上側にカートリッジを配置した構造です。

当然ですが、完全分離加圧なのでカートリッジ内とフロントフォーク内のオイルは混ざらないです。

言い換えると、汚れやすいカートリッジ外のオイルとカートリッジ内の減衰力に重要なオイルを分離出来ていることになります。

特に慣らし時には、アウター内面とスライドブッシュの摺動による金属粉とかでオイルが汚れやすくなりますので、これがカートリッジ内のオイルと混ざらない事は重要です。

合せて、ダストシールとオイルシールを通過する外部からの泥とか水分とかもマッド走行ではオイルを汚す要因になりますので、減衰力の安定化と言う意味では優れた構造だと考えますね。

ロードレースでの慣らし方法とは!

こちらもモトクロスと同様にコースを走行して慣らしを行いますが、特に意識しての慣らしはあまり考えなくても良いと思います。

新車の場合は、エンジンと車体の慣らしも含めて徐々にペースを上げて慣らしをすると良いでしょう。

こちらもトップライダーは慣らし後にオーバーホールを実施していると思います。

サスペンションのオーバーホールについて

こちらもカテゴリー毎に説明して行きたいと思いますが、特にオフ系はオーバーホール頻度を高くすることをお勧めします。

レース用サスペンションのオーバーホールとは!

このレースのカテゴリーですが、どのカテゴリーもトップライダーは定期的にオーバーホールを実施しています。

因みにワークス系モトクロスレース車は、毎レース終了毎にオーバーホールを実施。

練習車は、大凡10時間をメドにオーバーホールを実施しているようです。

他のレースカテゴリーでも数レース終了毎でオーバーホールを実施しているようです。

あくまでこれはトップライダーの話であり、プライベーターや趣味でレースを楽しんでいる方は別です。

ではどの位が適正なのかは使用状況にもよりますので、明確には提示出来ないのが実情です。オーナーズマニュアルにも明確には謳ってないですね。

因みに2010年RTL260Fのオーナーズマニュアルでは、フロントフォークオイル交換が3コンペ毎交換とメンテナンススケジュールに記載されています。

オフ系のマシンでレースに積極的に参戦している方では特に泥や水分の混入も考えられますので、出来れば数戦に一度とか半年に一度とかのオーバーホールを推奨します。

特にフロントフォークはユーザーレベルでもオーナーズマニュアルを参考にある程度分解出来るので実施されることをお勧めします。

前述の2010年RTL260Fモデルでは下記の部分まで分解可能です。

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©Honda Racing Corporation 2018 2010-RTL260F Owners manual & Parts list P7-36より引用

他のメーカーやカテゴリーでも大凡カートリッジ以外は分解可能と考えて良いと思います。

ただカートリッジは分解出来ないものの、カートリッジ内のオイルの抜き取りと洗浄液による清掃は可能ですので、一般的なオーバーホールとしては充分でしょう。

それに対してリヤクッションは、ほとんどの場合がユーザーレベルでは分解不可なので、サスペンション専門のショップにオーバーホールを相談されるとよいと思います。

一般的な市販車のオーバーホールとは!

こちらは更に難しいですね。明確な判断基準がないのが実情です。

ただ言えることはサスペンションオイルと言えども酸化して劣化していきます。

エンジンオイルほどシビアではないですが、オイル自体の経時劣化は発生してます。

合せて、分離加圧タイプのリヤクッションでは、封入窒素ガスのブラダ透過も少なからず発生します。

この辺りは年度単位を基準として乗車フィールでタレてきたと感じたらオーバーホールを考えて良いと思います。

特に旧車では経時劣化も発生しているので、ヘタリが改善して見違える様に作動性と乗り心地が良くなる可能性があります。

こればっかりはあくまでも個々人の判断でしかないので、ご自分で適正時期を見極めて実施して頂ければよいと考えます。

終りに

ちょっとご希望に添えたかは難しいと思いますが、一番ハードな各カテゴリーのレースを基準に、どの位置づけで慣らしやオーバーホールを行うかを判断してご自身のメンテナンスに役立てて頂ければ幸いです。

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