kazy's susmania

サスペンションの話題を中心に自動車業界の話題を提供しています!

『サスペンションとは!』中級編-Part2

 今回は前回に引き続き中級編Part2です。

「サスペンションとは!」中級編-Part2

前回の終わりがちょっとこ難しい話になってしまったので、その辺りの話は改めてさせて頂くとして、中級編の続きを進めます。

4.減衰力特性を左右する2つの減衰発生機構

減衰力を発生させる機構としては大きく分けて2つあります。

一つ目がピストンに開けたピストン孔、可変アジャスターに代表される針(ニードル)と孔の隙間のオイル流路抵抗。

二つ目がピストン上に積上げた板バネをオイルが押し開いて流れる時に発生する抵抗。

ここでは簡単にこれらの特性がどうなっているのか見ていきましょう。

Fig.8 減衰力特性

f:id:kazySUS:20191026130859j:plain

1).孔による減衰特性

一般的にピストンに開けたピストン孔と可変ニードル孔を総称して二乗孔と呼びます。

これは孔による減衰特性が二乗特性になることからそう呼ばれています。

→Fig.8の左始点からA点までが二乗孔による二乗特性になります。

注射器で勢いよく水を飛ばそうと思うと思いのほか力が必要になりますが、これは孔の抵抗が圧力に対して二乗特性になっているからです。

孔を絞れば絞るほど、勢いよく出そうとするとたくさんの力が必要になります。

2).ピストン上の積層バルブによる減衰特性

こちらの板バルブ積層による特性は孔による二乗特性とは異なり、2/3乗特性となります。

→Fig.8のA点から終点までが板バルブ積層による2/3特性になります。

これは板と板の静摩擦で堪えていた圧力が、一端、板バルブを押し開くと下がるイメージかな。あまり上手く説明出来ないけど…。

因みにFig.8のA点がブローポイントと呼ばれる孔から積層バルブの切り替わりポイントとなります。

可変アジャスターを絞めこんで減衰力をHARD方向(黒→赤)にするとブローポイントは必然的に下がります。

3).実際の使用事例

廉価なダンパーには孔だけの物もありますが、一般的なダンパーとしては基本的に二乗孔と積層バルブを併用しています。

この組合せで全体的な減衰力特性が決まる事になりますが、主に低速域を孔でコントロールし、中高域を積層バルブで抑える手法となります。

なので、この辺りの設定が開発担当者の腕の見せ所となります。

この辺りのマニアックなところは上級編で改めて触れてみたいと思ってます。

5.クッションに於けるフリクションとは!

量産仕様のクッションではフリクションは作動性を悪化させる要因とされ、フリクション低減によりクッション性能を向上させる手法が一般的です。

1).フリクション発生要因

クッションに於けるフリクションとは油圧機器として安定して機能するために必要なシール構造に起因しています。

ダンパー内部のピストンシールによるフリクション

ユニット内を摺動するピストンとユニット内面の間をオイルがリークすると安定した減衰力を発生させられません。

従って、ピストンの外周にはピストンシールと呼ばれる樹脂や金属に特殊なコーティングしたブッシュがシール材として使われます。

この部分では作動による圧力差に負けないブッシュの緊迫力が重要であり、フリクションも高くなります。

ダンパーロッドが摺動するフリクション

ダンパーロッドを支える部分は更に重要で、ロッドを支える摺動部分にも上述と同じくコーティングしたブッシュが使われます。

合せて、ユニット内部のオイルを外部に洩れさせないためにロッド摺動部にはオイルシールも使用されています。

こちらの部分は上記の通り、二つの機能(摺動と洩れ防止)が求められ、更にフリクションが高くなる傾向にあります。

ストラット式に代表される強度部材としてのフリクション

ストラット式ではロアアームとカートリッジ本体で全ての方向の荷重受ける構造のため、ダンバー本体に曲げモーメントが加わり易く、この曲げモーメントによる力もフリクションも増加させる要因です。

一般的には嵌合長(ロッド摺動部とピストン摺動部との距離)を長く設定する方が有利ですが、こちらも車体レイアウトとの兼ね合いで必要以上に嵌合長を長く設定出来ないのが現状です。

2).フリクション低減による性能向上

これらの3つフリクションを積極的に下げる事でクッションの作動性を向上させ、路面凹凸に起因するギャップ追従性と乗り心地性能を図ります。

それからフリクションには大きく分けて、静的フリクションと動的フリクションの二つがあります。

一般的には静フリクション>動フリクションとなりますが、静フリクションが高いと動き出しがスムーズでなくなり、デジタル的な動きと感じられ易く、高級感のない安っぽい動きになります。

こちらも静フリクションと動フリクションの差を少なくする事が大切になります。

これらがフリクションによる性能向上となります。

さて、次回も中級編と称してお送りする予定ですが、資料を準備する関係で少し時間を頂くつもりですのでご容赦下さい。

kazySUS